業務用真空包装機とは?

?

真空包装機と聞いても一般の家庭でもあまり馴染みがないため、字面のとおりに真空状態で包装ができるという認識だけで詳細は分からないということがほとんどかと思います。今回は業務用真空包装機について機能や飲食店では実際にどのようにして使われるのかなどをご紹介いたします。

また不要となり売却したい場合などに、どのような点が買い取り時の査定に影響するのかなどについても、併せてご紹介をいたします。

1. 真空包装機について

解説

真空包装機とは、食品が入れられたプラスチック製のフィルム内の空気を抜いて真空状態にし、そのままフィルムを熱溶着してシールすることで食品を包装する装置です。代表的なメーカーとしては「TOSEI」、「ニチワ」などが挙げられます。

真空状態にするために空気を抜くことは「真空引き」と呼ばれています。また、真空状態で包装することは、そのまま「真空包装」または「真空パック」と呼ばれています。

真空包装をするといっても、その包装の仕方や真空引きの方法がいくつか存在します。

1. 1. 包装方法

  • 真空包装
  • 食品内部の空気を含んだフィルム内のすべての空気を抜いて真空にする包装です。食品内部の空気が抜けることで柔らかい食品は潰れてしまうため、形状を保ちたい食材には不向きです。フィルム内は真空状態で酸素がほとんど含まれない状態となり、酸化が抑制されて食材が劣化しづらくなります。

  • 脱気包装
  • フィルム内を完全に真空状態にするのではなく空気の量を調整して残す包装です。真空引きをすることで潰れてしまうような柔らかい食材を包装する際に最適ですが、酸素が残るので通常の真空包装よりも食材が劣化しやすいです。

1. 2. 真空引きの方法

  • ノズル式
  • フィルムの開口部にノズルを差し込み、ノズルからフィルム内の空気を脱気してシールする方法です。真空引きの力が弱いために脱気包装しかできず、真空包装機として扱われてはいますが実際には正しい意味での真空包装はできないため注意が必要です(真空脱気包装機や脱気真空包装機などの呼称で販売されている製品もあります)。家庭用では主にこちらのノズル式が採用されています。

  • チャンバー式
  • 真空状態にできるチャンバー内にフィルムをセットし、チャンバー内を真空にすることでフィルム内も真空となり、その状態でシールする方法です。チャンバー式ではノズル式と異なり正しい意味での真空包装が可能となっています。厨房用の業務用真空包装機では主にこちらのチャンバー式が採用されているため、本紹介は基本的にチャンバー式に関するものになります。

1. 3. 真空包装のメリット

  • 劣化防止
  • 酸素が遮断されるため、食品の酸化を防ぎ変色や菌の繁殖が抑制されます。また、食品内の水分の蒸発も防ぐため、乾燥しづらく冷凍保存した際にも冷凍焼けによる劣化が起こりづらいです。

  • 臭い移り防止
  • 臭いがフィルム外に漏れず、フィルム内に他の臭いが入り込まないため、臭い移りを気にする必要がありません。

  • 解凍作業の簡略化
  • フィルムで包装された状態なので、冷凍した食品を解凍する際にはそのまま流水解凍や氷水解凍をすることができ、手間を省いて解凍時間を短縮することができます。

  • 味付けの効率化
  • 真空包装をする際に食品内に含まれる空気も抜けますが、液体の調味料を一緒に真空包装することで空気の抜けた箇所に調味料が即座に染み込むため、短時間で食材に味付けをすることが出来ます。

1. 4. 真空包装のデメリット

  • 消耗品
  • 包装するための「フィルム」だけでなく、フィルムを熱溶着して閉じるための「ヒーター線」や「絶縁布」が使用により劣化してシール不良が発生するため、断線や破れを見つけたら交換する必要があります。また、真空状態を作り出すための真空ポンプで必要となる「オイル」が一番重要で、こちらも使用により劣化することで真空状態が甘くなったり真空包装機自体が使用不可となったりする場合もあり、オイルを綺麗に保つための「フィルター」も含めて定期的な交換が必要となるため、使用頻度に応じたメンテナンスコストがかかることになります。

1. 5. 業務用と家庭用の違い

  • 真空度
  • ほとんどの家庭用の真空包装機はノズル式で食材内の空気までは抜けず、フィルム内の空気のみを抜く「脱気包装」しか対応していません。ごく一部の製品ではチャンバー式で食材内の空気も抜ける製品も存在します。

  • 液体の包装不可
  • 一般的な家庭用の真空包装機は液体の包装には対応していません。一部の製品ではオプションパーツを付けることで対応する製品や、そのまま対応している製品も存在します。

  • 専用フィルム
  • 家庭用の真空包装機では専用のフィルムが必要な製品が多く存在します。専用フィルムは汎用で使用できるものと比較して高価となり、製品にもよりますが高いもので1枚あたり80円程度かかる場合がありますが、業務用のフィルムでは1枚あたり10円程度です。用途にもよりますが業務用の真空包装機では100円ショップで売っているような100枚で100円のポリ袋を使用できる場合もあり、1枚あたり1円となるためとても安価に済ませることも可能です。

2. 業務用真空包装機における特徴

袋(シール)

業務用真空包装機でも製品によって特長があり、特定の機種のみ対応している機能もあるため、その機能などをご紹介します。

2. 1. 本体のサイズ

小型でテーブルや作業台の上における「卓上型」と、大型で設置が必要な「据置型」の2種類があります。チャンバーのサイズ自体が据置型のほうが大きくなるため、卓上型で包装することができないサイズの食材を据置型では包装することが可能です。また、卓上型と比べて据置型のほうが一度に包装できる数が多く処理速度が倍以上になるため、大量生産が必要である、設置スペースに余裕がある、資金に余裕があるなどであれば据置型を使用するのがよいでしょう。

2. 2. ホットパック

一般的なチャンバー式の弱点として、チャンバー内を真空にすることで気圧が下がり液体の沸点も下がるため、高温の液体を含んだ食品を真空包装しようとするとすぐに沸騰して吹きこぼれてしまい、真空包装ができないという点があります。そのため、真空包装をするには一度食品を冷却してから包装する必要があり、冷却するまでに落下菌や浮遊菌が混入するリスクが発生することや、冷却することで液体内に含まれていた油分が凝固してしまい均一に小分けして包装できないなどの問題がありました。

ホットパックに対応した機種では温度やフィルムの膨らみを検知して減圧制御することで作り立ての高温状態でも真空包装が可能となっているので、冷却する手間と時間が省けて作業効率もアップします。

2. 3. 凍結含浸調理対応

食材の見た目を保ったまま軟らかくする凍結含浸法という技術が医療や福祉の現場で活用されています。食材を軟らかくするために特殊な酵素を含んだ調味液を染み込ませる必要があり、その際の手順として通常では減圧装置を用いて食材を減圧環境内に一定時間置き、調味液を染み込ませるといった手法が用いられますが、真空包装機でも真空状態を保持することで代用が可能です。

凍結含浸調理に対応した機種ではもちろん対応していますが、真空包装時のコース設定で真空状態の保持が可能な機種や、フィルムは必要となりますが一度真空包装をしてしまうことでも対応させることは可能です。

2. 4. ガス置換包装

包装する際に炭酸ガスや窒素ガスなどの不活性ガスを封入する包装です。柔らかい食材を真空包装すると縮んでしまいますが、真空引き(脱気)とガス封入を繰り返すことで空気と不活性ガスを置き換えて可能な限り酸素を排除することで、柔らかい食材を縮ませずに劣化しにくい状態で包装できるようにしています。市販されているポテトチップスの袋が膨らんでいるのは、不活性ガスによって袋がつぶれないように膨らませるとともに酸化を防ぐというガス置換包装が利用されている身近な例となります。

不活性ガスには防虫や防カビ作用がある種類も存在し、柔らかい食材に対する包装だけでなく、食材の劣化をより防ぐためにガス置換包装を利用している場合も多いです。

ガスボンベと真空包装機の接続自体は、ガス販売店などに相談して対応してもらう必要があります。

2. 5. 上下シール

フィルムをシールする際には、ヒーター線が含まれる台座部分に置かれたフィルムを上からプレスして熱溶着することでシールされますが、厚みのあるフィルム、アルミ袋、ガゼット袋などではきちんとシールできない場合があります。

上下シールに対応した機種は名前の通り上下から熱溶着するので、通常のシールでは対応できない袋などでもしっかりと閉じることが可能です。

3. 真空包装の使い道

真空包装

飲食業での真空包装の使い道を簡単にご紹介します。

3. 1. 食材の保管

基本的な使い方となるのが食材の保管です。食材が劣化しづらい、フィルムで包装されているためケースが不要でスペースを取らない、臭い移りしないため気兼ねなく重ね置きできる、など真空包装は食材の保管にとても有用です。

3. 2. 真空調理(低温調理)

味付けなどの下処理をした食材を真空包装し、温度管理のできる調理機で95℃以下の低温で長時間加熱する調理法です。「焼く」、「煮る」、「蒸す」などの調理法と比べて低温で調理することから低温調理とも呼ばれています。

  • 真空包装により少ない調味料でも食材に味が十分に染み込む
  • 真空包装により旨味を逃がさずに加熱調理できる
  • 温度管理によりタンパク質の変性をコントロールした状態で十分に火を通せる
といった特性を持ち、旨味があり食感もとてもよい状態に仕上げることが可能となっています。

加熱調理作業は手順を設定した調理機に任せることとなるため、作業手順をマニュアル化しやすく誰にでもすぐに調理作業を任せることが可能です。

加熱した後にはそのまま提供することもできますが、冷蔵または冷凍状態で保存し、必要に応じて湯煎や電子レンジなどで再加熱して提供する場合もあります。真空包装されていることから輸送も簡単で、セントラルキッチン方式を採用しているチェーン店などでは真空調理が多く採用されています。

3. 3. パウチ食品の販売

劣化しづらく輸送も簡単ということで、真空包装はネット通販での販売にとても向いています。真空調理した食品を冷凍して配送すれば解凍して加熱するだけで良く、手間がかからずにご家庭でお店の味を楽しむことができるので、お客様も食指が動きやすく販路拡大に貢献しやすいです。

デリバリーやテイクアウト用のお弁当を容器ごとそのまま真空包装することで、容器の蓋がずれることによる中身の混在や汁漏れを防ぐことも可能で、持ち帰りや配送時の心配事が解消されます。開封するまで異物の混入や中身の抜き取りなどが発生していないことも分かるので、衛生面や安全面でもお客様に良い印象を与えることでしょう。

ネット通販、デリバリー、テイクアウトなどを始める際に、取り扱う食品の種類によっては新たに保健所の許可が必要となる場合があるため、販売を開始する前に一度保健所に相談しておきましょう。

4. 真空包装の注意

菌

真空包装のメリットの紹介にて菌の繫殖を抑制すると挙げましたが、菌にも増殖するために酸素が必要な好気性菌と、酸素がなくとも増殖可能な嫌気性菌という種類があります。嫌気性菌は真空包装をしても増殖してしまうためあまり効果がありません。さらに、嫌気性菌の中でも酸素があると増殖することができないボツリヌス菌のような偏性嫌気性菌という種類があり、偏性嫌気性菌に対しては真空包装をすることで逆に菌の増殖が促進されてしまうため、衛生管理にはとても気を付けて使用する必要があります。

5. お手入れのポイント

お手入れ

せっかく購入した厨房機器はやはり長く使い続けたいところ。お手入れをすることで部品にかかる負荷が減り機械が長持ちしますので、そのポイントをご紹介いたします。

5. 1. 真空ポンプのオイル

業務用真空包装機を維持管理するうえで一番重要なことが、真空ポンプのオイル点検、オイル交換、フィルター交換です。オイルは気密性の確保、ポンプ冷却、各部の潤滑などとても重要な役割を担っています。点検せずに放置してしまうと、真空引きの際に真空度が甘くなり空気が抜けにくくなり、最悪の場合にはポンプの故障に繋がります。オイルやフィルターの点検、交換時期などについては取扱説明書に記載されているはずですので、それに従い必ず適切な対応をしてください。

5. 2. シール部

「ヒーター線」と「絶縁布」はシールする際の物理的な接触や熱によって劣化します。シールする際の時間を長くしすぎると消耗が早くなるため、フィルムによって適切なシール時間を設定するようにしましょう。

6. 中古買取時のポイント

買取

中古厨房機器を取り扱うミツギ厨機が買い取りの際に注目するポイントをご紹介いたします。ご紹介する点の状態が良ければ査定時の評価が高くなります。

6. 1. 製造年式

「製造から8年以内」が買取限度の目安となります。製造年式はステッカーに記載された製造年または型番や製造番号から判別することができます。買取可能な期間を過ぎる前に売却して新しいものを購入するのも一つの手です。

6. 2. 外観

大きな傷やへこみがあるとマイナス査定となってしまいます。汚れが目立つのもマイナス査定となってしまうので査定の前に掃除しておくと良いでしょう。

6. 3. 消耗品

オイル、フィルター、ヒーター線、絶縁布などが劣化したままの状態ですとその分査定に響きます。

7. おわりに

食材の包装だけでなく真空調理や通販などにも利用できる業務用真空包装機についてご紹介をいたしました。本記事がこれから業務用真空包装機を購入する方などへのご参考になれば幸いです。

また、ミツギ厨機では中古厨房機器の買い取りを随時おこなっておりますので、売却をご検討の方はお気軽にお問い合わせくださいませ。

作成日: / 最終更新日:

お問い合わせはこちら 販売・買取について
ミツギ厨機ロゴ

著者

比留間 豊

ミツギ厨機現代表。中古厨房機器の買取や販売に以上に亘って携わっており、その中で培ってきた知識や経験に基づいた厨房機器に関するお役立ち情報を発信してまいります。