業務用IH調理機とは?

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業務用の熱調理器具ではガス調理機が一般的となっていますが、近年ではIH調理機が普及しています。今回はそのIH調理機について、その他の調理機と比較しながらメリットやデメリットをご紹介いたします。

1. 業務用IH調理機について

解説

IH調理機は電気を使って加熱調理をする機器です。IHとは「誘導加熱(Induction Heating)」のことで、詳しい説明は省略しますが電磁誘導という原理を用いて鍋の金属を自己発熱させるという方式です。その特徴についてご説明いたします。

1. 1. メリット

  • 清掃が簡単
  • 鍋を置く天板部に五徳のような突起物がないフラットな構造となっているため、天板についた汚れを掃除する際にはひと拭きするだけで簡単に済みます。

  • 高い安全性
  • 火を使わないため火事の危険性がとても低いです。ただし、熱した調理器具は高温になるので可燃性の物質は近くに置かないほうが安心です。

  • 高い熱効率
  • 火を当てて鍋を加熱する際、その熱量のすべてが鍋底を加熱するためには使用されておらず、鍋の外側へ逃げているために熱効率が低くなっていますが、IHは火を使わずに鍋自体を発熱させるため熱効率がとても高くなっています。火が見えないので火力が弱いように思われやすいですが、実際には真逆で火力がとても強く、連続調理時などの回転効率の上昇が期待できます。

  • 熱気の少なさ
  • 熱効率でもお伝えしたとおり、火を使う場合にはその熱量が鍋底の外側へ逃げ、その分で周りの空気が熱せられて厨房内の温度が上昇することになります。これは厨房内が暑くなりやすい主な原因になっていますが、IHは鍋底だけが熱せられるため熱気が少なく、厨房内への影響も少なくなっています。厨房内は熱中症になりやすい環境のため、調理機器から対策をしておくのはとても有効な手段です。

  • 段階化された火加減調節
  • 火加減が数値で段階化されているため、調節がとても簡単です。調理手順をマニュアル化する際にも数値で記すだけなので理解がしやすいです。また、メモリー機能で加熱の段階や時間を登録できる機種もあるため、そういった機種を使用する場合には作業がより簡略化されて習熟速度の向上が見込め、新人のアルバイトでもすぐに調理作業を任せられるようになるでしょう。

1. 2. デメリット

  • 油煙の広がり
  • 火を使った調理の場合には、熱された周囲の空気により上昇気流が発生し、油煙や水蒸気を上方に誘導してレンジフードに吸い込みやすくさせています。IH調理機では鍋の周囲の空気が熱されないために上昇気流が発生せず油煙や水蒸気が周囲に広まりやすく、厨房内に汚れや臭いが残りやすくなっています。調理環境を清潔に保つためにもこまめに壁面、テーブル、床などを掃除する必要があります。

  • 調理鍋の制限
  • 電磁誘導を使って金属を自己発熱させる都合により、鍋の材質によって加熱できるものとできないものが存在します。基本的には鉄やステンレスなどの磁性を持ち磁石が付く金属製のものであれば加熱できますが、磁石の付かない金属製、ガラス、土鍋などは加熱できません。また、鍋底の形状にも制限があり、丸みを帯びたもの、反りがあるもの、脚が付いたものなどの平面でない鍋底は使用不可となっています。始めからIH調理機を使用しての店舗新設などであれば対応した調理器具を揃えればよいのですが、ガスからIHへ変更するとの場合には、使っていた調理器具がIHに対応しているものかをチェックする手間もかかります。

  • 鍋振りができない
  • 天板から鍋底が離れると加熱が一時的に停止されて火力が弱まるため、鍋振りをするには向いていません。そもそも、鍋振り自体は火を使った加熱において鍋の側面の熱を有効利用するための調理方法で、IH調理機では鍋底は十分に加熱されているけれど側面の熱が弱いという状態のため、鍋振りができても具材は混ざりますがあまり意味がありません。鍋振りをせずに具材をしっかりとかき混ぜるだけでよいというIH調理機での調理方法に慣れる必要があります。逆に、調理に慣れていない人には鍋振りは難しい動作となるため、新人のアルバイトでも問題なく作業ができるというメリットとも言えるでしょう。

1. 3. 一般用と業務用の違い

  • ヒーターの同時使用
  • コンロなどのヒーター部が複数ある調理器具の場合、一般用では消費電力の問題ですべてのヒーターを同時に最大火力で使用することができませんが、業務用ではヒーター毎に電源を独立した設計とするなどして同時に最大火力で使用できるようになっています。

  • 耐久性
  • 業務用のIH調理機では本体がステンレス製となっていて耐久性が高くなっています。鍋を置く天板部は、一般用も業務用もほとんどが耐熱性のセラミックガラスを使用していますが、一部の業務用IH調理機では鍋が落下しても割れないよう、より高い耐久性を持った材質を使用している製品もあります。

2. IH調理機と電熱器の違い

食材の保管環境

IH調理機と同じ電気を使う調理機としてラジエントヒーターやシーズヒーターなどの電熱器がありますが、こちらは調理器具としてはあまり普及しておらず、IH調理機との違いも不明瞭な人が多いようです。

電熱器はIH調理機と同じで電気を使って加熱をしますが、その工程に違いがあります。電流を流すと発熱する電熱線という金属線が使われており、天板上に電熱線が渦巻き状に配置されていて、発熱した電熱線で鍋を加熱するのが電熱器となります。つまり、電気を使って鍋を直接加熱するのがIH調理機で、間接的に加熱するのが電熱器という違いになります。

間接的となる分で熱効率が悪くなるため、電熱器のほうが立ち上がりまでの時間がかかり、電気代も高くなります。また、ヒーター部分となる電熱線が使用後でもしばらくは高温のままとなりますが、火が出ないために見た目では判別がしづらく、怪我や事故の原因にもなりかねず注意が必要となります。これらの理由などによりIH調理機と違い電熱器はあまり普及していません。

3. IH調理機とガス調理機の比較

お手入れ

基本的には「1.業務用IH調理機について」で挙げたメリットとデメリットを反対にしたものがガス調理機の特徴となります。

コスト面について、イニシャルコストはガス調理機よりもIH調理機のほうが圧倒的に高価です。同じメーカーでの同程度のガス調理機とIH調理機を比較して定価が5倍以上の差がついているものもあります。

熱効率はIH調理機のほうが高いため、ランニングコストで回収ができるかというと必ずしもそうとは限りません。基本的には「ガス調理機(都市ガス)<IH調理機<ガス調理機(プロパンガス)」の順番で料金が高くなる傾向にありますが、この順番も地域のガス料金や電気料金によって左右されるため、ご自身の地域での各種料金を比較してみる必要があるでしょう。

万が一のことではありますが、地震による大規模な災害が発生した際のライフラインの復旧速度はガスよりも電気のほうが早いことが東日本大震災や関東大震災などの過去の災害から見ても明らかになっています。店舗をなるべく早く復旧させたいとの場合には、ガスを使わないIH調理機が有効な選択肢となるでしょう。

4. 業務用IH製品について

買取

一番メジャーな製品としてはIHコンロ(クッキングヒーター)となり、これまでに説明した内容についてもIHコンロを基本とした説明となっていますが、業務用のIH製品としてはそれ以外にも下記のものがあります。

  • スープレンジ
  • 中華レンジ
  • これらは、天板上に鍋を置いて調理をするタイプの製品です。IHの中華レンジは特徴的なものとなっていて、IHコンロでは対応できない中華鍋が使用可能です。鍋を置く部分が中華鍋の形状にフィットするように窪みがあるため、鍋全体がムラなく加熱されてIHの火力を存分に発揮することができるようになっています。それ以外のメリットやデメリットはIHコンロと同様です。

  • フライヤー
  • 餃子焼き機
  • 茹で麺機
  • グリドル
  • ロータリークッカー
  • 炊飯器
  • これらは、鍋のような調理用容器が外付けではなく本体と一体化しているタイプの製品です。どれも、メリットやデメリットについては鍋を使わない点以外はIHコンロなどと同様です。

5. おわりに

業務用IH調理機についてご紹介をいたしました。本記事がこれから業務用IH調理機を購入する方などへのご参考になれば幸いです。

また、ミツギ厨機では中古厨房機器の買い取りを随時おこなっておりますので、売却をご検討の方はお気軽にお問い合わせくださいませ。

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著者

比留間 豊

ミツギ厨機現代表。中古厨房機器の買取や販売に以上に亘って携わっており、その中で培ってきた知識や経験に基づいた厨房機器に関するお役立ち情報を発信してまいります。