業務用シンクとは?

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飲食店を始めるにあたり営業許可を得る必要がありますが、審査項目に一定のサイズ以上の槽があるシンクを必要とする項目が含まれていることや、食器や食材を洗浄するために使用するなど、飲食店では業務用シンクを欠かすことができません。今回はその業務用シンクについてご紹介をいたします。

また不要となり売却したい場合などに、どのような点が買い取り時の査定に影響するのかなどについても併せてご紹介をいたします。

1. 業務用シンクについて

解説

業務用シンクは食材や食器等を洗うための流し台です。飲食店では洗い物がとても多く、衛生管理の観点からも絶対に必要とされており、食品衛生法でも洗浄設備として設置が義務付けられているほどです。一口に業務用シンクといっても様々なタイプがあるので、それぞれ紹介していきます。

1. 1. 材質

機能的には一般的な家庭用キッチンのシンクと同じで特別な機能などはありませんが、業務用での激しい使用に耐えられるように水槽部分以外もほとんどがステンレス製となっています。

ステンレスでも「SUS430」製と「SUS304」製の2種類に材質に分かれていて、SUS304製のほうがSUS430製と比べて耐熱性・耐食性・強度すべてにおいて優れていますが、その分価格が高くなっています。素人では見た目上の区別がつきませんが、磁性の有無があり、SUS430は磁性がありSUS304は磁性がないため、厨房機器店などで現物を見る際には磁石があると判別しやすいです。

1. 2. サイズ

サイズは下記いずれかの組み合わせが基本となっています。

    • 450mm
    • 600mm
    • 750mm
    • 900mm
    • 1000mm
    • 1200mm
    • 1500mm
  • 奥行
    • 450mm
    • 600mm
    • 750mm
  • 高さ
    • 800mm
  • 水槽の深さ
    • 200mm以上(※)基本的にはメーカー毎に統一された深さとなっています。

1. 3. シンクの形状

  • 一槽/二槽/三槽シンク
  • 一般的な業務用シンクの形状で、数字の通り水槽が分かれているだけのシンプルな形状です。横幅は二槽であれば900mm以上、三層であれば1200mm以上となることがほとんどです。

  • 水切付シンク
  • 二槽シンクなどで一槽分をつぶして水切り用の台にした形状のシンクです。洗ったものを一時的に水切り台においておくことで不要な水分を落とし、水切り台部分はシンクのへり部分を残して窪んだ形をしているので水が外側へこぼれません。台付シンクとの呼称もあります。

  • ダスト付シンク
  • ゴミを捨てるための小さい槽が付いた形状のシンクです。ゴミ用の槽にちょうど収まるサイズのカゴが付属していて、カゴにはパンチングなどで穴が開いており、濡れたゴミの水を切って捨てることができます。基本的には通常サイズのシンクにゴミ用の槽が増えることになるため、通常の一槽シンクなどよりも水槽の幅が狭くなります。

  • 舟形シンク
  • 手前側のへりが50mm程度へこんでいる形状のシンクです。「\___/」のように船の形にへこんでいるため舟形シンクと呼ばれています。へりが邪魔にならないため、シンク内にまな板を敷いて水を流しつつ魚を捌いたりすることが簡単にできます。水槽内で作業をするために広くスペースを取る必要があるので、水槽の数は基本的に分かれておらず一槽です。

  • ソイルドシンク
  • 「soiled(汚れた)」という名前のついたシンクですが、汚れたシンクというわけではありません。食器洗浄機を使用する場合には、汚れた食器をつけ置きしておくための水槽や、ラックに並べるための作業台が必要となりますが、これらを一つにまとめたものがソイルドシンクで、シンクの横に作業台がはみ出るように付属している形状となっています。通常は作業台部分と食器洗浄機を隣接させて、ラックを押し引きするだけで作業台と食器洗浄機の間をラックが簡単に移動できるように設置します。つまり、食器洗浄機の形状や作業現場の使い方に合わせてソイルドシンクを設計する必要があるため、基本的には受注製作となり既製品は少ないです。ソイルドテーブルとの呼称もあります。

1. 4. 水槽下部の形状

  • 三方枠
  • 水槽の下には何もなく、脚を支える枠が左右と奥の合計3本付いているタイプ

  • スノコ
  • 水槽の下にステンレス製のスノコが付いていて物が乗せられるタイプ

  • キャビネット
  • 水槽の下が引き戸式のキャビネットになっているタイプ

上記の3種類となっていて、スノコになっているタイプが一番多く利用されています。

1. 5. バックガードの有無

一般的には壁面に接して設置するシンクですが、使用時に発生する水はねによって接している壁の汚れや劣化を引き起こします。バックガードはシンクと壁面を隔てる遮蔽物で、高さ10~15㎝、奥行5cm程度の壁がシンク上部の奥側に付属する形式となります。シンクのヘリ上に置かれるのではなくそのままくっついた形となりますが、メーカーが公表している外形寸法の奥行はバックガードありのものでもバックガードなしのサイズとなっているので、バックガードありのシンクを購入する際には注意する必要があります。

壁面への水はねを防ぐことが主な目的ですが、バックガードに水栓(蛇口)が設置可能となっているため、バックガードなしの場合にはシンクのヘリに垂直方向に取り付ける台付タイプのみが設置可能ですが、バックガードがあることで水平方向に取り付ける壁付タイプも設置可能となります。

1. 6. 水栓(蛇口)

業務用シンク単体だけでは水栓(蛇口)は付属しておらず、水栓の購入や取り付けなどを別途おこなう必要があります。水栓を取り付けるためには頑丈なステンレスに穴をあける必要があるので、工具の用意がない場合には業者さんに任せましょう。

2. 飲食店の営業許可について

飲食店の営業許可

飲食店を開業する前には保健所から飲食店営業許可を取得する必要があります。審査項目の中に洗浄設備(シンク)の基準がありますが、この基準は食品衛生法に基づいてはいますが厳密には規定されておらず、各自治体の各々の判断により基準が設けられていて、基本としては洗浄設備には槽を2槽以上必要とし、槽の内径は「幅45cm、奥行き36cm、深さ18cm以上」を目安とするといった基準で審査されてきました。

2022年6月に食品衛生法が改正されて「食品等を洗浄するため、必要に応じて熱湯、蒸気等を供給できる使用目的に応じた大きさ及び数の洗浄設備を有すること。」と明記され、必要性や目的に応じた数やサイズであればよいという内容になりました。これは、改正前の基準が一般的な規模の飲食店に対応したもので、小規模な飲食店では小さなサイズのシンクで済ませることができたとしても、基準サイズのシンクを使用しなければなりませんでしたが、必要性に応じたサイズで済ませられるようになり、スペースの節約や無駄をなくすことが可能となりました。しかし、具体的にどの程度であれば基準を満たすのかについては、個人では判断が難しく、各自治体でも基準は異なりますので、保健所に相談しましょう。

水栓(蛇口)についても審査項目があり、「水栓は、洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であること。」と明記され、ハンドル式のような手を使って開け閉めするタイプは使用不可となっています。そのため、肘で操作可能なレバー式や、足で操作可能なペダル式、接触不要なセンサー式などである必要があります。

3. 特注品について

特注品

業務用シンクの取り扱いがあるメーカーでは、希望するサイズや形状でのオーダーメイドを受け付けていることが多いです。既製品では満足できない場合には、メーカーに連絡を取り希望を伝えて可能かどうか尋ねてみましょう。

4. お手入れのポイント

お手入れ

せっかく購入した厨房機器はやはり長く使い続けたいところ。お手入れをすることで長持ちしますので、そのポイントをご紹介いたします。

4. 1. 表面の汚れ落とし

ステンレスは錆びにくい金属ではありますが、表面についた塩素や汚れなどを放置すると錆びてしまうことがありので、使用後にはこまめに拭き取りましょう。汚れや錆がひどい場合には台所用洗剤などの中性洗剤や金タワシを使用してください。

4. 2. もらい錆

鉄など他の金属の錆びた部分が触れている箇所からもらい錆が発生する場合があります。他の金属製品を置かないようにする、置く場合には非金属の台を挟むなど、長時間の接触は避けるようにしましょう。

5. 中古買取時のポイント

買取

5. 1. 外観

大きな傷、へこみ、錆などがあるとマイナス査定となってしまいます。汚れが目立つのもマイナス査定となってしまうので査定の前に掃除しておくと良いでしょう。

5. 2. 特注品のサイズ

既製品のシンクは、作業台やコールドテーブルなどの他の一般的な業務用厨房機器とサイズが合うように「1.2.サイズ」で挙げたサイズで作られています。つまり、それ以外のサイズでオーダーメイドされたシンクは他の一般的な業務用厨房機器とサイズが合いません。特に奥行と高さの違いに関しては段差ができることになり作業動線の邪魔にもなるため、中古では人気がなく敬遠されがちで買取価格も安くなることが多いです。

6. おわりに

飲食店では必ず必要となる業務用シンクについてご紹介をいたしました。本記事がこれから業務用シンクを購入する方などへのご参考になれば幸いです。

また、ミツギ厨機では中古厨房機器の買い取りを随時おこなっておりますので、売却をご検討の方はお気軽にお問い合わせくださいませ。

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著者

比留間 豊

ミツギ厨機現代表。中古厨房機器の買取や販売に以上に亘って携わっており、その中で培ってきた知識や経験に基づいた厨房機器に関するお役立ち情報を発信してまいります。